これまで、口コミだけでのべ1000人以上の指導をしてきたわけなのですが(ちなみに多分、歴にしては少ない方です。)非常に不思議に思うことがあります。
割合としては、メジャーアーティストやプロ活動をしている人ではなく、セミプロやアマチュア、趣味というには本気度合いがもっと高い方、歌は好きだけど苦手意識がある方への指導の方が多いわけです。
「◯◯だろうな」という勝手な先入観は抜きにしたいので、初めましての方には必ず、「どうしてボイストレーニングを受けたいと思ったのですか?」と伺っています。一部ですが、ご返答の傾向として多いものを紹介します。
①歌が苦手だから、上手く歌えるようになれば自信がつくはずだと思って。
→とても多いです。そして、すごくわかります。歌ったら笑われた、音痴だと言われた、下手くそと言われたなど、自分が歌った時にネガティブな言葉を受け取り、それを真に受けて悩んでいる方。
歌を上手くして差し上げることは、正直言ってとても簡単です。「上手い」の定義が、【音程が外れない】という意味でおっしゃる方が多いからです。
音程が合わない時、そのほとんどの原因は曲のキーと自分のキーが合ってないことが圧倒的に多くて、キーを上げるのか下げるのかは当然自分の耳を使って判断させてもらうんですが、その方に合うキーを出して差し上げると、それまで全然音程が取れなかった方でも8割くらいは音程が合うようになります。
残りの2割は、メロディーを取るのがそもそも難しい音階であることがほとんどで、コツを教えればすぐに音程が狙えるようになります。10分ほどいただきますが、「音痴で悩んでいる」という方にとってはあまりにあっけないので「え?これでいいの?」という反応。原曲のキーが必ずしも、あなたにも合うとは限りません。
②年を重ねたら、声量が出なくなってきた、高音が出なくなってきた。
→これもとても多いです。でも大体こういう人は嘘つきです。笑
というのは、例えば笑った時、驚いた時、怒った時、テンションが上がった時、喜びを表現する時など、その人によってですが部屋中に声が響くほど声量を発揮する瞬間があります。もちろん、咄嗟に出る声ですので狙って出してはいないんですが、少なくとも【出ない】というのは嘘になります。断言しますが、声量は上がります。高音も同じです。
僕がお教えしている方の最年長は70代後半ですが、声量も音域も以前とは比べ物にならないくらいになっています。もちろん、20代や30代と比べて筋肉の動きや骨格の歪みなどは年季が入っているので、成長期の爆発力のようなものとはちょっと違います。日常生活に足りる使い方を繰り返しているから眠っているだけで、起こせばいいんです。
日本人は原曲で歌えることをかっこいいと思う傾向にあると海外のトレーナー仲間が首を傾げていましたが、僕も同じことを思います。特に男性シンガーは近頃、女性のキーと変わらないか、ソプラノ音域を軽々出す人が増えてきました。かっこいいですよね。本当にかっこいい!憧れちゃいます。
ですが、例えば低音部分がとても色気のある声を持っているのに、ハイトーンボイスに憧れるあまり、弱点を克服することに意識を全振りしていて強みを活かそうという気持ちがあまり無い人が多いのです。その海外のトレーナーも、「どうして自分の一番いい声で歌おうとしないんだろう?」と、難解な問題を解く時のように腕を組んでいました。
声帯は持って生まれたもので、成長と共に育んできたものです。移植できないので、変えもききません。いくらお金を積んでも別の声帯に付け替えることはできません。そして、あなたと同じ声帯の振動を持つ人はいません。元々世界にたった一つの宝物を持っているわけですから、まずはその箱の鍵を開けてから、更に大きく深く磨いていくことで、ピカピカに光ります。そしてですね、大きな声も、高い声も、必ず出るようになります。
今までずっと同じ使い方で喋ったり歌ったりしてきたわけですから、その積み重ねによって無意識に発声の癖がつき、どんなに練習しても同じ癖で歌いながら探るので変わらないと悩む人も多いでしょう。そこは、元音痴で低音域しか出なかった僕の出番です。自分の気持ちを表現するため、20年間で1000万近く注ぎ込んであらゆる発声法を学んできています。元々自分が深い深い悩みとコンプレックスを持っていたので気持ちも理解できるし、あなたの可能性を信じ、最大限引き出すことに長けていると自負しています。
しかしですね、まずは鍵をかけている(とは本人は思っていない)宝箱を開けてからです。あなたが理想とする声量や高音域は、憧れのアーティストやシンガーがそれを出しているのを聞いたことがあるが故に脳内再生されていて、追いつこうと頑張っているかもしれませんが、あなたにはあなたにしか無い声で声量を出せるし、あなたの声で(つまり声帯の振動と、骨格や肉付きからくる共鳴で)出せる高音域があります。
どんなに憧れのシンガーの声を想像しても、前述の通りあなたの声とその人の声は違うものなので、「あの声を僕も私も!」と思って練習するよりも、あんな感じの声を…くらいちょっとふわっと目指す程度にすることをお勧めします。方向を示すコンパスのような役割にするのです。もちろん憧れのあの人に声を似せることはできますが、声松メソッドの概念としては、あなたにしか出せない声に出会って欲しいというのが本音です。
③息が続かない
→これもとても多いお悩みなのですが、原因も様々過ぎて一概には言えません。ただし、呼気(吐く方)と吸気(吸う方)に問題があることは明確です。もう少し詳しく話すと、
・適切に吸えてない
・適切に吐けてない
ということです。いっぱい吸えばいい!とか、あんまり吐かなければいい!というわけではありません。何が原因になっているかは、プロのトレーナーに見極めてもらってください。一声聞けばわかるはずです。極端に肺活量が少ないという方も中にはいると思います。喘息持ちでいまだにモンテルカストやシムビコートを手放せないので、その苦しさや不自由さも理解できるつもりです。ライブ中、ブレスの度にヒューヒューなってることも多々ありますが、それすらも音楽に!歌にする!というのがメソッドの醍醐味でもあります。
歌の為に超肺活量マックスの肺をどなたかから頂こうとか、その周りの筋肉を移植しようという発想にはなりませんよね。諦めるのではなく、受け入れる。そしてそれも武器にする方法があります。当然、吸えない、吐けないというのは眠っている部分を起こすことも必要になってくるので、レッスンでは吸う力と吐く力を目覚めさせつつ、特性を武器にします。
まずはこれくらいでしょうか。声松メソッドでは、あなたの本来の力を呼び起こし、使えるようにします。使いこなす、というフェーズに行くまでには発音や発声法も関わってくるので少し時間がかかるかもしれませんが、自分の潜在的な能力をどうやって引き出してもらえるのだろう?と楽しみにレッスンを受けていただければ幸いです。
いずれにしても、声があなたの感情を超えることはありません。あ、発声法で出るようにはなる可能性は大いにありますが、【感情が伴わない声はいずれ壊れる】というのは、世の中のトレーナーの共通認識なのではないかと思います。
日常の中で感情を表現するときにはスルスルっと出る大きな声や高い声が、歌になると途端に出なくなってしまう人が(僕も含めて)たくさんいます。だから、このHPに書いてある声松メソッドの概念が生まれたわけですね。